B社で主任を務める20代後半の社員が、夏休み明けに突然出社しなくなりました。
上司は心配して本人の携帯電話に何度も連絡したり、自宅や実家を訪ねたのですが、全く行方がわかりません。
3週間が過ぎて、会社としてはやむなく懲戒解雇の処分を下すことに決めたのですが、本人と連絡が取れないため対応に苦慮し、顧問弁護士に相談しました。
まず、内容証明を2回送付しましたが、もちろん不在で受け取りはありません。
人事担当者もその社員の自宅に足を運びましたが、自宅に帰っている様子もないようです。
その後、弁護士と相談して、裁判所から公示送達という手続で解雇通知を出すことになりました。

* この会社では、就業規則に行方不明社員が出てしまった場合を想定した規定を設けていなかったために、この社員を解雇するまでに大変な手間と時間を要することになってしまいました。
さらに、多大な出費が生じた点も見逃してはいけません。人事担当者が行方不明社員の対応のために時間を使い、さらに弁護士に相談料を支払うという事態になると、会社としては大きな損失を被ります。
例えば年収500万円の社員について時給換算してみると、1時間当り5,000円支払っていることになります。
これは厚生労働省の統計で「会社は、社員1人当り給与の1.8倍の費用をかけている」というデータをもとに計算した結果です。
日本の労働者の年間労働時間は約 1,800 時間ですから(500 万円×1.8)÷1,800 時間=5,000円となります。
行方不明の社員に対し、「内容証明郵便」の送付、自宅訪問、そして裁判所に公示送達の申し込みといった一連の対応で、人事担当者が仮に30時間費やせば、15万円の損害となります。
さらに弁護士費用も考えると20万円以上の出費になります。
就業規則に「行方不明社員への対応」の規定がないばかりに、会社としては、ずいぶん時間とお金を使ってしまうことになりました。